監修 長谷剛志先生のコメント

 年を重ねると、生理機能の低下や疾病、あるいは生活環境の変化により「食べる力」は徐々に衰えていきます。そして、「食べる力」が低下すると、栄養状態が悪化するばかりでなく、食べる楽しみの喪失から心理的満足が得られず、周囲との関わりが薄れ、孤独化にもつながります。

さらに、誤嚥や窒息に代表される摂食嚥下障害をきたすリスクも高くなるため、「食べる力」の低下は、社会的孤立や生命予後に大きく関与すると考えられ健康寿命を維持するために不可欠な機能と言えます。

一方、介護の問題において高齢者の食事支援は重要なケアであるとともに介護する側にとっては負担の大きいケアでもあります。「食べる力」については未だ明確な定義はなく、標準的な評価方法も存在しません。そして、「食べる力」を考えるには口腔や咽頭の機能的な問題のみならず全身状態や食欲、嗜好、食形態の選択、姿勢保持など多岐に検討する必要があり、また各々の要因が複雑に関連するため多角的な観察視点が求められます。

食事観察サポートソフト「い~とみる」の使用により、これまで高齢者の食事について悩んでいた方や、医療・介護現場における食事場面の観察がつかめずに迷っていた方にとって「食べる力」がイメージしやすく現状把握に便利なツールとなるでしょう。

また、五角形のレーダーチャート(い~とみるスコア)より対象者の栄養状態や提供する食形態の選択につながる検討が行いやすくなります。食事場面の観察による多職種会議や栄養指導の際の判断材料として使用していただくことも可能です。

今後、増加の一途をたどる高齢者の食事支援に役立つツールになることを期待します。

公立能登総合病院 歯科口腔外科 部長 長谷剛志