事例4 「看取り」までの食支援
アルツハイマー型認知症・廃用症候群 Yさん:
病院では、補液点滴を行い、経口補水ゼリーを提供していたが、ほとんど摂取できていなかった。看取りの提案で施設入所となったが、家族は、「できる限り最期まで食事を提供して欲しい」と希望。
●ミールラウンド参加職種
看護師、歯科衛生士、管理栄養士、理学療法士、介護支援専門員、介護職員、相談員
●課題
誤嚥のリスク高く、本人の食欲も減退している
●対応
「い~とみる」のコメントを参考にして以下に取り組んだ。
食事時の姿勢をリクラインニング45°に調整し、提供する食形態を再考した。
とろみ(学会分類2013:0t)より開始し、段階的に粥ゼリー(学会分類2013:1j)、
ミキサー食(学会分類2013:2-1)と変更した。また、不足分は補助栄養を追加した。
さらに、食事前後に吸痰を行い、1口量・ペーシングに注視して介助を継続した。
<食事提供(食形態の変更)>
改善前 | 経口摂取困難 |
---|---|
改善後 | 粥ゼリー(半量)(学会分類2013:1j)、ミキサー食(学会分類2013:2-1) 補助栄養 1日3個(学会分類2013:1j) 水分ゼリー(学会分類2013:0t)、濃いとろみ ※改善後の食形態を継続提供 |
嚥下調整食学会分類2013 : 略称(学会分類2013)
当初は、食欲を失っていたが、食支援を継続することにより、徐々に「うどんを食べたい」など自発的言動が出現。一時は、3食経口摂取できるようにまでなった。家族にも「い~とみる」の経時的変化を提示し、現状の食支援と状態変化について説明し理解してもらった。家族は施設の食事管理に信頼を深め、入所時から亡くなるまでの施設での看取りの在り方に感謝していた。
事例5 「看取り」からの回復
脳梗塞後遺症・糖尿病(右下肢切断) Rさん:
経口摂取が困難となり、家族は、胃瘻や中心静脈栄養を希望されたが、病院から造設と管理のリスクが高いと指摘され、末梢点滴と可及的経口摂取により看取り管理となった。家族は、できる限り最期まで経口摂取を継続して欲しいと希望した。BMI:16.4、体重減少率(6カ月)7,1%、経口摂取量は3割程度で直近1週間はほとんど摂取できていなかった。
●ミールラウンド参加職種
歯科医師、看護師、歯科衛生士、管理栄養士、理学療法士、介護支援専門員、介護職員、
相談員
●課題
徐々に食事摂取量は減少し、微熱、痰、傾眠、炎症反応がみられる
●対応
「い~とみる」のコメントを参考にして以下に取り組んだ。
「主治医」に相談し処方薬を見直し、内服中止。覚醒状態に合わせ食事を提供することとして粥ゼリー(学会分類2013:1j)、ソフト食(学会分類2013:3)から開始し、補助栄養も付加した。食事中は、ティルド式車椅子を使用し、交互嚥下を促した。
<食事提供(食形態の変更)>
改善前 | 経口摂取困難 |
---|---|
改善後 | 粥ゼリー(学会分類2013:1j)、ソフト食(学会分類2013:3) 全量=>半量へ変更 補助栄養 1日3個(学会分類2013:1j) 経口・経腸栄養剤のプリンを付加 水分ゼリー(学会分類2013:j) 水分はうすいとろみ =>経過観察後 中間のとろみへ変更 ※改善後の食形態を継続提供 |
嚥下調整食学会分類2013 : 略称(学会分類2013)
観察3ヶ月後(看取り解除) | BMI:18.3 体重:4.1㎏増加 食事摂取量 77% |
---|
口腔ケア:歯周病の進行もあり、歯科訪問を依頼し口腔内環境を整えた。
看取りの段階で、糖尿病の療養食を中止し、好みである甘いコーヒーを提供することで、本人の「食べたい」気持ちが復活した。多職種で取り組んだことにより、看取り開始から3か月後には体重の増加や経口摂取量の改善によって看取りの解除となった。
< 使用事例1-3 >
嚥下調整食学会分類2013
「『日摂食嚥下リハ会誌17(3):255–267, 2013』 または 日本摂食嚥下リハ学会HPホームページ: https://www.jsdr.or.jp/doc/doc_manual1.html 『嚥下調整食学会分類2013』 を必ずご参照ください。」